トリムについて| ミリ単位の重要性

utideで使う手法の1つに、壁面を4方を「トリム」で囲むことがあります。特別なディテールではありませんが、ホテルやレストランに行くたびに寸法を測ったりしながら、住宅に合わせて採用しています。

 

「トリム」って何?と思われる方もいらっしゃると思いますが、見切り材、装飾です。私がさすがだなあと思ったのがパークハイアット ニセコHANAZONOです。エントランスホールはもちろんのこと、レジデンスの共用廊下や室内まで綺麗にトリムを使っています。

 

 

また、以前utideメンバーで宿泊したマリブホテルもよく考えられているなあと学びがたくさんあったホテルです。

きっと、あ、見たことある?と思われた方も多いかと思います。

<トリムの役割>

トリムはデザイン的に素敵なだけでなく、機能面でも大きな意味があります。汚れや、傷がつきやすい壁の角を木目のコーナーで回すことにより、壁が傷つきにくくなるからです。トリムの幅もとても大事です。壁の大きさや、天井の高さ、空間の広さ等で色々検証しています。例えば以下の大きな壁は、ただ4方を囲むだけではバランスがとれないので、間にトリムを足すなどしています。この場合大事なのは縦を勝たせることです。縦の方が横よりも数ミリでることで縦のラインが強調できます(この時の小口の処理も注意が必要です)

また、トリムが連続するとうるさく感じるので、トリムの中をトリムと同じウッドで仕上げることもあります。

もちろん費用はかかりますが、ただの真っ白な壁ではなく、トリムを施工することにより機能とデザイン両方を兼ねているのでご提案することも多く、トリムで囲われた真ん中の壁にアートを装飾すると、そこがよりフォーカルポイントにもなり空間にアクセントをプラスしています。

<トリムのデザイン>

トリムの幅は様々ですが、建具枠と合わせる場合は70mmにしています(utideの建具枠は70を基本としています)また、縦のラインを強調したいので、横と縦とで 1 〜 2mmほど差をつけています。四方枠ではなく、縦のラインの中に横のラインが入っている様にあえて見せています。ただ、巾木や天井のトリムの幅を太くすることもよくあります。建具や造作家具とのバランスで細かく調整していくことが大切です。utideの基本は70mmですが、毎回トリムの出や大きさを物件ごとに検証して変えています。

 

 

<1mm単位の重要性>

1mmで一体なにが変わるのか中々想像がつきにくいと思います。ミリ単位の調整が重要なのは、「空間にリズムを生み出すため」です。 すべてを同じ高さ(レベル)に揃えてしまうと、凹凸がなくなり、平坦で単調な印象になりがちです。わずか1mm~2mmの印象の変化を残すだけで、光と影が生まれ、空間に陰影がつきます。この小さな工夫によって、平坦な印象を取り除き、精緻にされた雰囲気を演出することが可能です。たとえば、以下の写真をご覧ください。よく見ると、段差が2箇所ほど設けられたデザインになっています。このような段差があることで、空間に立体感が生まれ、視覚的にも豊かな表情を演出できることができます。同じ高さに揃える場合でも、ミリ単位の調整が必要です。例えば、下部収納のデザインでは「隙間」の幅をミリ単位で計算し、全体のバランスを丁寧に整えています。このような緻密な調整によって、統一感を見通しながらも精査された仕上がりを実現していきます。

 
まだ、引き渡しをしたばかりで、撮影をしていないのですが、先日完成した大宮の家でもトリムを使っています。トリムの出幅が大きいので、作り方が全く異なります。トリムの幅は 100mm。クロス・ミラーめんと木トリムの段差は 15mmです。迫力と高級感が格段に出ます。これまでも上から貼るタイプとは異なり、60mm × 100mmの縦の木角材を立てて、その内側にミラー・クロス壁を立てています。

 
 

<海外デザイナー|トリムの使い方>

海外のデザイナーでトリムを素敵に使っているのは、Sophie Patersonです。
2008年に設立されたSophie Paterson Interior は、高級インテリアデザインのトップ企業へと成長。サリー州に拠点を置くこのスタジオは、英国、世界各地でプロジェクトを展開し、個人顧客とデベロッパーの両方を対象に絶妙な住宅インテリアを専門に手掛けています。どこか歴史を感じられるデザインが印象的であり、トリムの使い方はもちろん、それ以外でも素材同士の重なり合いや、スタイリングのバランスも日本のデザイナーにはない感覚で空間を仕上げています。
インスタグラム,YouTube,TikTokもぜひご覧ください。

 

 
 

<番外編|陰影で印象に残っている美術館>

以前東京都庭園美術館に訪れた際凹凸の陰影ディティールに驚かされました。東京都庭園美術館の本館は1933年に皇族朝香宮家の自邸として建てられ内装はアンリ・ラパンやルネ・ラリックら、フランスのアール・デコ様式における著名なデザイナーが起用されており、西洋のデザインを体感できるとても素晴らしい建築物です。いたるところにmm単位で変化をつけている箇所を確認することができ、それによりもたらされる印象は、思わず目を凝らしたくなるディティールでした。

このように細部にまでこだわり空間を作り上げていくことは、空間の印象を左右するといっても過言ではないと思います。細部の緻密さが空間全体を構成していくので入った瞬間のお部屋の印象が変わってきます。「神は細部に宿る」という名言がありますが、その通りだと思いますし、それを体現できるよう今後ともデザインしていきたいと思います。

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